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再就職:Ian Dury

at 2004 04/04 01:03

◆再就職しました。新人研修大変です。20代の若者たちと一緒に研修を受けているとなんだかちょっと気恥ずかしいですね。それも講師が自分より若かったりして。

◆そういえば大学生の僕は村上春樹のレイモンド・カーヴァー全集にあこがれて、「いつか読みやすい海外文学全集を出版するんだー」なんて夢を抱き出版社を目指したものでした。バブルの崩壊で中小の良心的出版社の採用自体がなくなり、いづれは中途でとの想いで大手を受験したものでした。それがいつのまにかアニメ系の仕事になり、漫画編集を経験して、気づいたら広告業界人になってしまった。人生っていろいろですねぇ。

◆あなたの人生は予定どおりですか? ぼくはいつも1年後の自分が見えません。予想を大きく裏切る状態です。いったい50歳のボクは何をやっているのでしょうか? 少なくとも20歳の時の夢のような自分ではない気がします。占いでは50代で心臓系の大きな病気をやらかすみたいなので、どうぞ経済的に不安定な状態でないことを祈るだけです。

◆バスの運転手と介護士の間に生まれたIan Duryは7才の時の小児麻痺が原因で、左半身が不自由な障害者になってしまいました。障害の苦労と周囲の差別やイジメに悩まされながらも絵画に活路を見出した彼はアートスクールの教師になります。そして友人たちとはじめた趣味のバンドが高じてキルバーン&ザ・ハイローズでデビュー、レーベルの倒産やバンドの不和で一度は音楽の道を諦めかけますが、インディーレーベルを立ち上げようとするジェイク・リビエラらのStiffレコードに取り上げられ、ソロデビュー。デビューシングルがいきなり全英2位、セカンドシングルは1位を獲得。セカンドアルバムのDo It Yourselfがアルバムチャートで2位を獲得し、35歳のデビューにもかかわらず時代の寵児としてもてはやされることに。

◆ノリに乗ったこのアルバム、全体を貫くのは「ファンク」です。FUNKといっても僕らが普段思うJBやP-FUNKのそれとはかなり違います。白人にしか作れない妙な間のある、スカのようなしかしかなりテンポの速いビートです。でも音のクオリティからはジャズやフュージョンっぽいものも感じられます。これがイギリスの労働者階級のファンクなのでしょうか? だとしたら彼らはなんてイカした/イカれた音で踊るのでしょう。とても正確なリズムでシャカシャカ軽い音を鳴らすドラム、いきなりチョッパーよりもカッコいい低音を刻むドラム、とても冷たいのに激しく転がるピアノ、、、そしてそれらの間を作為的に(?)微妙な間を抜いてあおりまくるイアンの歌/チャント/叫びの威力は誰をも振り向かせるソウルがあります。全く白人の音でしかないのにファンクでありソウルであるDo It Yourself、この音に後継者がいれば今のUKダンスチャートはもっと異質なものになっていたのかもしれません。

◆そんな彼ですが3rdからコンポーズのパートナーチャズ・ジャンケルが脱退、様々なトライアルをしますがヒットに恵まれず、ポップチャートから彼の名は消えていきます。しかしその独特の風貌(麻痺で引きつった醜顔?)が目に留まり、俳優として活躍を開始、味のある演技でフェリーニ、ポランスキー、グリーナウェイらの映画で大役を演じることに。また、ミュージカル舞台劇「アップルズ」では、俳優だけでなく脚本と音楽まで担当します。そしてまた音楽の道に戻り、、、、、2000年癌により57年の人生を終えた彼へのトリビュートアルバムにはポール・マッカートニーやシンニード・オーコナーらの超有名人まで参加してます。

◆やはや人生の妙を体現したような男Ian。不具の少年が教師になりポップスターになり、映画俳優、ミュージカル脚本、そしてビートルズに追悼されるなんていいですね、夢を見せてもらえそうです。35歳でのデビューってことはまだ1年以上時間があります、ギターでも買ってみようかしら?(笑)



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魂の画家:Sister Gertrude Morgan

at 2004 04/07 20:42

◆こわいほど素晴らしいCDに出会ってしまった。それがこのSister Gertrude MorganのLet's Make a Recordだ。

◆Presavation Hall Recordから今年(2004)発売されたこのCDは昔のものの再発らしいが、独りで唄50分弱の伴奏は唯一自分で叩くタンバリンだけ。その時間がまるでだれることも飽きさせることもない。ヴォーカルとタンバリンだけで思わず腰が動くほどの黒くて強いグルーヴを聞かせてくれる。無音の中から非常に濃いうねりが聞こえてくるのだ。そしてそれはWild Magnoliasを想起させるほどの力強いソウルの叫びを聴く者の心に叩きつけてくれる。

◆ガートルード・モーガンは文字通りシスターである。ラファイエットのバプティスト教会で育った彼女は37歳の時にストリートの伝道師になり、南部を旅する。そしてニューオリンズで孤児院を設立するが、台風によって破壊されてしまう。その孤児院で子供たちに教科書代わりに絵を描いて教育していたのだが、家主の勧めもあり、新たな孤児院の資金に絵を売り始める。

◆彼女の素朴な絵は次第に高い評価を得るようになり、NYのMuseum of American Folk ArtやワシントンでのTwentieth Century Black American Folk Art Showなどで紹介されることに。しかし借金を返し終わった78年、彼女は絵を描くのを辞め、その2年後に帰らぬ人となった。享年80歳。

◆彼女の素朴で美しいイラストはアルバムジャケでも、多くの現代美術書でも目にすることが出来る。しかし、その音楽についての資料は全く手に入れることが出来なかった。でも僕らは彼女のソウルに触れることが出来る。この本当に素朴でピュアで、しかしグルーヴィでソウルフルな録音は、きっと多くの人の心と魂と肉体を揺さぶるだろう。
この歌をアナタに是非聴いてほしい!



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公式HPありました→


魅力的なHP:Cubanismo feat. John Boutte The Yockamo Allstars

at 2004 04/07 23:25

◆このHPは音楽ファンページです。で、僕Gojohの担当ページの中には3つ、音楽を紹介するコーナーがあります。

◆一つはここオトシャベリ。様々な音楽をネタに日々の雑記を書くページです。そして本年1月からはじめたニューオリンズプロジェクトは大好きなNOの音楽をやたらめったらレビューするページで、日本初レビューのアルバムも少なくありません。そして3月末からはじめたススメページはジャンルやテーマに分けてNO以外の僕の好きなアルバムの紹介をするページで、3年前にはじめたsusumeと三月末に閉鎖された音楽オンラインショップFugaに寄稿したネタに新たなものを加えていってます。

◆かなり多くのアルバムをレビューしているはずです。そしてWeb上では日本初の紹介もあります。しかし、どうもオトシャベリ以外の2つのページの反応が皆無なのです。

◆なぜなんでしょうか? 誰も読んでくれていないのでしょうか? ダラダラ書きなぐりつづけるオトシャベリに反応が多く、何度も推敲を重ねた真面目なレビューページへの反応(しかも2コーナーあり)がゼロってのはどういうことなのでしょうか、頭を抱えております。

◆そういえば、他の人のHPに行くときでも割と見ているのは一つのコーナーだけ、あとはBBSだったりするんですよね。要するにコンテンツわかれ過ぎで、訪問者がどこを見ればいいのか困惑して、結局一番上に行ってしまうというわけなのかもしれない。力の入れ場所が分散されて散漫になっているんでしょうね。デビューアルバムで色々な音楽をやりすぎて、結局どんな音なのか分からなくなるようなものか? しかしレビューページと日記を統合するわけにもいかない。困ったものです。結局はどこを開いても魅力的なコンテンツにあふれたHPにする以外ないのでしょうか? 自分の企画力と文章力の低さに反省しております。

◆John Boutteという人をご存知ですか? 昨年8〜9月にも紹介しましたが、甘くてほろ苦いハイトーンボイスが魅力のニューオリンズのヴォーカリストです。昨年の時はレトロ風味のソウルで占められているソロアルバムと、ケイジャンザディコ〜カントリーのフレイヴァーに満ちたバンドUp Town Okraとのユニットをご紹介しました。今度はキューバンです。

◆ハバナを拠点に活躍するソンのバンドCubanismoクバニスモはトランペッターのJesus Alemaniyヘスス・アレマニを中心にソンの実力者を集めたオールスターバンドで、96年にデビューしたそうです。2000年に発売のこのMardi Gras Mambo: Cubanismo! in New Orleansはタイトルどおり、長年交流の深いキューバとNOの融合がテーマなのでしょうか、The Yockamo Allstarsというニューオリンズジャズバンドとの共演そして約半数の曲でJohn Boutteがリードボーカルを取っています。

◆まさに融合という言葉がぴったり、というかこの2つの音が根底で繋がっていることを再認識したというか、ラテン調で聴かせるMother In LawやIko Ikoが全然違和感を感じさせず、元からキューバンだったような気分になります。妖しげなキューバンメロディにのって流暢に唄うブッテのボーカルに聞きほれます。キューバンのコーラスとのやり取りも絶妙なことこの上ありません。そしてめくるめく熱帯の夕べを演出するこの一枚はハバナとNOのブラスが交わりあうミディアム曲で幕を閉じます。曲名もCuborleans、同じ血を受け継ぐ2つの街の融合を宣言しているかのようです。

◆ソウルにカントリー、キューバンそして99年にはなんとも甘いジャズアルバムも発表しているブッテ、様々な音楽のなかで光り輝くその歌声はどこを開いても魅力的なアーティストであることを証明しています。



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魅力的な笑顔

at 2004 04/15 23:43

◆鷺沢萠さんが亡くなられた。実は全くその作品を手にしたことがないボクなんかが日記で書くことではない。

◆しかし、彼女には或る勝手な思い出がある。それは大学を卒業して出版社に入った一年目のことだった。ボクは会社の玄関で受付の娘と雑談していた。ガラス越しに見える本郷通りは雨粒がアスファルトの色を濃くしていた。

◆受付の娘と二人で雨は嫌だねえとかこんな日は外に出ない仕事でよかったなどなど話していたところ、エレベーターから編集部のS氏が女性を連れて出てきた。S氏は縦横ともとても大きな方で、髪も短く刈り込んでいて少々強面、新入社員のボクは、声をかけられるだけで直立不動になってしまっていた。

◆そんなS氏がとても優しそうな声で自分の胸くらいの身長の、そしてとても魅力的な女性と話しながら出てきた。「すっごい雨だなぁ、傘持ってきますよ」と回れ右をしようとするS氏に、「大丈夫だよ、駅すぐだから。ありがと!」と上着のフードを頭に引っ掛けながら微笑む女性。彼女はS氏に気遣わせないようにと、玄関を小走りに走り出て、扉を開けると、「またね!」とS氏にニコっと笑い、そのまま街路に消えていった。あとで聞いたが、ソレが鷺沢さんだった。

◆強面なS氏がこんなに気を遣う女性と言うことは担当作家なんだろうなぁとは思ったが、作家に雨の中走らせてしまうS氏、作家に傍観者でさえドキドキするような美しい笑顔で微笑ませるS氏とその担当作家のつながりの深さに嫉妬を覚えた。ボクはあんな風に担当作家に微笑んでもらえる編集になれるだろうか? ととても不安感でいっぱいになった。そしてS氏の能力に、それまで以上に頭が上がらなくなった。

◆あんな美しい笑顔を見せることが出来た女性が自ら命を絶ったということが残念でたまらない。彼女のご冥福を祈るばかりである。


下目黒二丁目:Funkadelic

at 2004 04/29 20:47

◆実は固有名詞にめっぽう弱い。

◆なんのことか全然分からないと思うが、バンド名や曲名やアルバム名に別の固有名詞や数字が入っているものに結構よわいのだ。まだ意味が分からないと思うので例を出すと

Love Portion No.9
52nd Street
Uncle John's Band
ヘッド博士の世界塔
恋人と別れる100の方法
Lucy In The Sky With Diamond
Music From Big Pink
Fifth Avenue Band
From Langley Park To Memphis
下目黒二丁目(これは大田プロか)

◆その数字や名前に、彼らしかわからないストーリーや想いがあるんじゃないか? そのストーリーを知りたい。そしてその世界を共有したい! などと感じてしまう。また、歌詞中に固有名詞が出てくるのも、知らない人物だととても興味がわく。とみたゆうこの歌詞に出てくる「読みかけのサガン」というワンフレーズでボクはフランソワーズ・サガンを読むようになったし、桑田の「マーレイさん」の一言からボブ・マーレィを知った。そんな細部を追求して世界を広げてきた33歳、今後ともよろしくお願いいたします。

◆さて、こちらも固有名詞連発のP-FUNKです。StarChild、Bop Gun、Funkentelechyやら色々なキャラやツールが出てきて独自の世界を構築しております。このアルバムUncle Jam Wants YouのUncle Jamも何者なんでしょうか? 歌詞対訳のない状況ではまったく想像すら出来ませんが、かなり凶悪なキャラクターではないでしょうか?

◆このアルバム、Funkadelicのアルバムの中ではかなりきっちりまとまったアルバムです。シンセを多用し始めたことで自然とギター弾きまくりのブラックロック路線から、Parliamentと同じようなFunk路線へ自然移行していったような。全米大ヒットし、現在DJのサンプリング御用達曲になったKnee Deepの存在もありますが、POPでキャッチーなメロディとクールにうねるグルーヴ。ダウナー系ドラッグのようなアルバムです。ただ、ファンカがこうなっちゃうとパーラとの差別化がなくなり、ふたつバンドをやっている意味がなくなっちゃったんでしょうね。79年のファンカ名義としては初の大ヒットアルバム。


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