◆日本で現役で活躍しているバンドの中で、もっともぼくの心を捉えて話さないのは月光騎士団、つまりムーンライダースだ。
◆彼らの魅力はさまざまある、がそのメンバーそれぞれの能力に負うところが大きい。当たり前のことのようだが、メンバーが全員、自分のやりたい事を十二分に出して活躍しており、且つ、バンドイメージが分断されていない集団も珍しいのではないだろうか? それが日本で最も古いバンド('75年結成)である事の所以でもあろう。
◆鈴木慶一はオジさん臭い。妙に弱くてわびしいのに妙に色っぽい。岡田徹のだみ声は妙にホンワカしていて味がある。くじらこと武川雅寛さんは演劇等の別活動がもっとも盛んだけどそのバイオリンは彼らのエキゾチックな音楽に欠かせない。白井良明のアバンギャルドさは、ともすればマッタリしてしまうライダースのアルバムを引き締めてくれている。かしぶち哲郎さんのエロティカルで大時代的な音と声はライダースのもっとも陰な部分であろう。ラマンとかリラとかアムールという単語を口にして許されるアーティストはあまりいない。ふーちゃんこと鈴木博文さんの誠実な歌声は、ぼく等の心に響いてくる
◆ぼくがもっとも惹かれるのは慶一さんの歌声、こんなに情けなくて切ない歌を白髪混じりになってまで唄われること自体が心に染み入ってしまう
ぼくは君のハンカチーフ
涙をふくために 生きている
Woo 気にすることはない
ぼくは君のアンダーウェア
いつでも脱ぎすてるためにいる
Woo 気にすることはない
---涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない
すてきな人の家のまわり ウロウロするリアリティー
それが 恋 恋 でも心は とてもロンリー
僕は蝿になって君の 家のまわりグルグルまわる
僕は蝿になって君の まわりグルグルまわる
---僕はスーパーフライ
男の弱さをここまでむき出されると、うなづいてしまう。あぁだからアンタはさえ子ちゃんに逃げられたのかな? 徳利片手に一緒に傷を舐め合いたくなる。
娘から噂を聞いた 世の中は魔物だらけ
息子たちは話もしない 家の中は静かすぎる
幸せな家庭は?
やさしさの答えは?
会社までの距離や
食事の中にある
目の前にある 静けさにある
テーブルに肘をついて眠る 疑問符にそっと毛布掛ける
質問は山ほどあるのに この家は静かすぎる
---犬の帰宅
一番目の息子は 部屋に鍵をかけて
鏡の前で ピンクに髪を染める
二番目の娘は 部屋に靴を持ち込み
夜になると 窓から外に這い出す
ぼくはなぐられても
なぐりかえしはしない
目が見えなくなっても
愛にこだわり続け
おまえたちを残して
ぼくは先に逝けない
---Who's gonna die first?
下はふーちゃんの曲だけど、息子や娘の心配をするポップスが作れるのってこの人たちだけじゃない? 彼らは高齢化社会の旗手なのかもしれない
◆最初に手にしたのはアマチュアアカデミー('84)、教授の番組で知った。イニシャルのような謎めいた曲名(YBJ、30、B TO F等)と機械的な精密さを持つくせに妙にエロチックな歌達。ぼくはいっぺんに夢中になった。
◆70年代のフランス映画オタクみたいなエキゾチックな曲たち、日本のニューウェイヴを先駆け、実践してきた革新的な80年代、落ち着いてオジさんとして開き直ってポップスを謳歌している黄金の90年代、どれもエロチックです。エロといってもチョコボールのような力を誇示するエロではなく、男のやせ我慢でエロいことを我慢して、家でひっそり「おれってバカだなぁ」というもどかしさを持つ、そんな情けないエロなんですな。
◆いやーマジで情けない、だから好きなんだろうな、気持ちがわかってしまって。
◆あまり多くは語れないや。また別の機会に続編を。。。
◆公式HP→ムーンライダース・ネット