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それぞれの人々。それぞれの時代:PierreBarouh

at 2001 01/04 00:12

◆21世紀が始まった。その初日、僕は世紀が変わっても忘れてはならないものを再確認するつもりで3時間以上の大作映画「愛と哀しみのボレロ」を見返した。この映画は20世紀の忘れてはならない出来事がもっとも凝縮されている映画だと思う。20世紀というもっとも世界が躍動した時代の叙事詩として、すべての映画の中で未来に残していかなくてはならない映画の一つだ。

◆20世紀のもっとも忘れてはならないもの、僕なりの結論は以下の三つ。

●ナチと日本軍の大量殺戮を中心とした世界大戦
●人類史上最大の実験といわれた社会主義国家の成立と失敗
●マスコミやコマーシャリズム、ショウビズのワールドワイドな政治経済的影響

◆映画の粗筋は:夫を東方戦線で失ったソビエトのバレリーナは息子にすべてを賭けるが、世界的成功を収めた息子は西側に亡命してしまう。また、ナチスの下、仏占領軍の官僚となった音楽家は、戦後大成功を収めるが、元ゲシュタポであった過去を一生非難され続ける。パリの見世物小屋のユダヤ人妻は夫と赤子共々強制連行、途中で息子を死から救うため捨てるが、戦後息子探しで人生を終わらせてしまう。その息子は・・・等々、米ソ仏独の住んでる地域も階層も違う人々が、大戦〜冷戦〜80年代という時代のうねりの中で人生を翻弄される様を2〜3世代に渡って追い続け、最後は一つの歴史的イベント現場で邂逅する物語。ただ一生懸命生きていこうとするそれぞれの人々、そしてそれを翻弄する見えない大きな力、それらを3時間以上に渡ってミッシェル・ルグランとピエール・バルーの音楽に乗せて見せ付けてくれる。

◆ナチ問題なら「シンドラーのリスト」や「ライフイズビューティフル」。社会主義なら「存在の耐えられない軽さ」等、さまざまな映画が時代、時代をくっきり記憶してくれる。しかし、この映画はそのすべてを凝縮してくれる映画だと思う。

◆そしてこれは人生の映画でもある。それぞれの人々の生・恋愛・夢・苦悩・老いを「理想抜きに」描いている。色々な考えの人がいて、色々な人生を送り、終えてゆく、しかし一生懸命生きていることそれ自体が人生を謳歌することだ、ということを教えてくれる。

◆冒頭の画像はPierre Barouhの1982年のアルバムLe Pollen。この中で「愛と哀しみのボレロ」テーマソングをリテイクしている。

◆時代に合わせ、シンセを中心としたアレンジに変化しているが、その輝きは変わらない。またこのアルバムは元YMO&サディスティックミカバンドの高橋幸宏が共同制作にあたり、坂本龍一・清水靖晃・ムーンライダース・加藤和彦そして元JapanのDavid Sylvianが参加している。

◆Pierre BarouhのレーベルSaravahのHPは→

初仕事ですね:DJ HASEBE

at 2001 01/05 13:36

◆新年初仕事ヽ( ´-`)丿 なハズなのに朝食のグラタントーストが胃にひびいてゲロゲロ(T_T)。社員総会の飯も酒も見るのも嫌です。もう最悪。。。本当はキリッと締まったHIPHOPでも聴きながら足腰軽く一年の始まりを飾るはずだったのに(笑)。

◆HIPHOPといえば、昨年末に聴いたDJ HASEBEの新譜HEY WORLDがとってもお気に入り。

◆フルアルバムでは初なんですよね。彼の活躍はミニアルバム「Adore」をシュガーソウルに惹かれてレンタルしてからのお付き合い。Charaや踊る大走査線、あゆ、「Siva1999」他、色々なリミックスやってる人だが、センスがいいですね。今回のアルバムも鈴木桃子やSpeech、RonnyJordan等、現在旬な人たちばかりをフィーチャリングしてます。お気に入りは4曲目「TABOO feat.MOMOKO SUZUKI/DABO」と7曲目「HEY YO HEY YO feat.BEENIE MAN」。実はHIPHOP系のアーティストは、雨後の筍状態なので、全然分からない人だらけ。ZeebraやSui−Kenくらいかなぁ、分かるのは(汗)。なのでデータ的コメントはないです。

◆それにしてもこのアルバムは買いです。HIPHOPが苦手な人でも聴きやすい。というのも、DJのリーダーアルバムなのに歌に重きをおいた作りとなっており、曲自体も変な小細工がなく、ストレートにメロディ重視の姿勢を貫いている。たんたんと語りのようなラップが続くこともなければ、メロディをさえぎるようなスクラッチもない。すべてが楽曲としての成立を中心に考えたものに仕上がっている。ラッパーも上手な方ばかりなので飽きないです。DJが総合プロデュースをしたボーカル(ラップ)コンピレーションアルバムのような感じです。深夜のドライブに最適。ノンストップダンスアルバムでもありますのでもちろん踊れますよ。

◆それにしても胃が気持ち悪い……(xx;

◆レーベルの公式HPは→。詳細データあります。

コーヒーとアメリカンミュージック:Bonnie Raitt

at 2001 01/14 19:49

◆喫茶店が好きだ。ちょっと古ぼけた暗くて樹の臭いのする穴倉のようなカフェで、読書しながら淹れたてのコーヒーを呑むのが至上の喜びである。

◆子供の頃、名古屋の実家では休みの朝は必ず喫茶店だったこともあるだろう。喫茶店文化の名古屋である。住宅地の1区画にひとつはかならず喫茶店があった。それもモーニングセットはコーヒーとサラダとトーストで250円くらいという激安さ。多くの人々が毎朝喫茶店の11枚綴り2500円のチケットで朝食をとっていた。僕にとって朝の爽やかなイメージは喫茶店のコーヒーとともにある。

◆東京に来たての頃、女の娘とのデートでカフェ・ラ・ミルに入り、コーヒーが800円な上に、つまみもトーストも出なかったことに驚愕した。2人でコーヒーとケーキで3000円以上! 僕にとってはボッタクリ以上のなにものでもなく、都会の怖さを思い知ったものだ(笑)。おかげで映画に行けなかった。

◆僕にとってコーヒーは煙草と共に最も重要な消費物である。一日5杯以上必ず口にする(ちなみに煙草は一箱だ)。だから気に入った喫茶店を見つけるととても満足した気分になる。僕が好きなのは、地下を含め、穴倉のような喫茶店。年輪を重ねた木造のカウンターでは、ちょっと厭世気味のオヤジが求道的な顔でコーヒーを淹れている。客も何時きて何時までいるのか分からないような、どう考えてもサラリーマンじゃない人たちばかり、そんなところがいい。BGMはアコースティックなサザンロック。「ここのマスターって昔、ヒッピーだったのかなぁ?」なんて思いながら、ブレンドを口にする。

◆実はコーヒーの味自体はあまりこだわらない。不味くなければOK程度だ。それよりもまったり時間を忘れさせる雰囲気、これが大切である。

◆そんな時間に最も合う音楽、それはBoonie RaittTakin' My Timeかも知れない。普通、常識的に考えるとサザンロック系ってのはウィスキーが似合う。そしてカフェに似合うのは橋本徹が選曲するようなサバービアな音楽、ボサノバだったりフレンチポップだったりするんだろう。でもカフェを知的でおしゃれな空間ではなく、時間軸から遊離した、内向的な空間と感じてしまう自分にとってはスティールギターやフェンダーベースの音が妙に心地良い。

◆89年にアルコール依存から復活し、現在もクオリティの高いアメリカンミュージックとスティールギターを聴かせてくれるボニー、このアルバムは73年発表の彼女の3枚目。ミュージカルスターの娘として小さい頃から音楽に接していた彼女は大学を中退後、音楽の道へ。学生時代からブルースを方向性としていたボニー、Howlin' Wolfらと親交を深めていたらしい。そして70年に二十歳でデビュー、このアルバムを発表した時は、まだ23歳だった。

◆しかし、弱冠23歳の娘のアルバムとは思えないほど老成されたこの3rdアルバム、参加アーティストもスゴイ。プロデュースも手がけているのはオーリアンズのJohn Hall、アメリカ音楽の集大成と言われるアルバムを作り上げたVan Dyke Parksや、今でもアメリカの土臭い音楽には参加ミュージシャンとして必ず名を連ねているJim Keltner、そしてLittle FeatのLowell Georgeなど、いまだにアメリカ音楽史に名を残す個性派ミュージシャンたちを一つにまとめてる。これが二十歳そこそこの小娘の仕業だとしたら脱帽以外の何物でもない。

◆このアルバムやVan Morrison、Little Featなどを聴いていると現在の20代の若者が作る音楽が、なんて底の浅いものだろうと思えてくる。逆にいえば、若いうちからこれほど完成&老練された音楽を作っていたからこそ、早くに破綻を来たし、酒や薬や宗教等に陥ってしまったのかもしれない。

◆そんなことを考えながら、うだつの上がらない30男がカウンターでブレンドを口にする姿はあまり格好よくないな。だからそれは自分だけの時間なのである(笑)。

◆試聴はこちらへ→

しばらく寂しいねえ:JacksonFive

at 2001 01/15 12:28

◆1月12日だ。クリスマスも正月も終わってしまった。もう、ワクワクした気分になるイベントはかなり先までないんだろう。

◆基本的にイベントは好きである。イベントに参加するとか、企画するとかいうよりも、イベント時期の雰囲気(イルミネーションとか、浮かれた人々のざわめき)が好きなので、恋人とどうのというよりもパーティ的なものが好ましい(笑)。

◆学生の頃、クリスマスイブの日、「1日恋人と二人っきり」というのはなんとなく損な気がして、人を集めてパーティをしたものだ。サークルの部室にケーキとシャンメリー(笑)とケンタを持ち込み、サークルのメンツを(恋人がいるいないに関わらず)集め、夕方までまったり♪ もちろん夜は恋人と食事&。。。でしたが。

◆そんなワクワクがしばらくないってのは寂しい限り。バレンタインってのも恋人同士ものなので、自分のいうところのイベント性(お祭り性)は低い。平日だしねぇ、GWまで待つしかないかぁ、今年は4年ぶりにちゃんとしたGWを送ってもイイみたいなので、今から「何をすればいいのか?」と悩んでいます(昨年までは、曜日や月を関係なく、月初は忙しかったので。正月もGWもありませんでした)。

◆だから、というわけではないですが、このごろJackson5を聞いてます。Michael Jacksonが子供の頃やっていたアレです。音楽性の高さは言うまでもないんですが、ワイワイ楽しそうなんですよねー。一年中お祭りみたいなかんじ。子供中心のホームパーティっていうのかな、全身全霊を込めて楽しんでる、そんな愛らしい感じが好きです。

◆で、上の画像、橋本徹さん監修のFree Soul版BEST。なんでこのアルバムかっていうと、1,2曲目がX'masアルバムからの選曲になってるからです。お祭り感覚が最初から全開なんですよね。クリスマスものって楽しくってちょっと寂しい、そんな感じが大好きです。実はクリスマス時期じゃないときに聴く事が多いなぁ。

◆で、このアルバム、いいっすよ。Jackson5の、モータウンの良いところ全部詰まってて。ビギナーにも、Jackson5好きにも満足の行く選曲♪ ジャケットもおしゃれだしね。これを聴いて初めてオザケンのOne Little Kissに元歌があることを知りました。やっぱオザケンってモータウンだなぁ。でも「さよならは言わないで」はSimplyRed版のほうが好きだなぁ。

人生を豊かにする音楽:JoeJackson

at 2001 01/16 16:21

◆JAZZアルバム? いえいえ、PUNK・ニューウエイヴの黎明期を作り上げた人の84年のアルバムジャケットだ。その名もBodySoul、歌ってるのはJoe Jackson。80年代始め「3人の怒れる若者」と評されたニュージェネレーションの一人(他はE.CostelloとG.Parker)だった。

◆コステロとジャクソンはよく似てる。ニューウェイヴの旗手としてデビュー、ロンドンの若者の代弁者としてカリスマ化されたが、どちらも3枚目のアルバムでレゲエを披露、その後コステロはカントリー、ジャクソンはJazzとクラシカルという伝統的世界へ傾倒していく。コステロがマッカートニーやバートバカラックと組んで、時々ヒットチャートに健在ぶりを表すのに対して、ジョーはまるっきりポップスとはかけ離れた世界に行ってしまっているところがファンとしては悲しいものだ。

◆そんなジャクソンの最後のUSヒット作品を放ったのがこのアルバム。彼のキャリアとしては前作「Night&Day」の続編というイメージが大きいのであまり評価されていない。しかしクラシックやジャズ、チャチャなどとPOPを実に自然に融和させ、独特の荘厳なイメージを作り上げたこのアルバムを、ぼくはMYベスト5の中に入れている。何度聴いても飽きないアルバムだからだ。

◆静寂をぶっ潰すバスドラムの響き、そして凛と聳え立つような堂々としたホーン、それらに支えられてたちあがるJoeの苦汁の叫び「Verdect!!」。荘厳な初章に引き継がれる不穏なダンスナンバーCha Cha Loco。美しいバラードによって沈静化された感情を一気にまくし立てる、焦燥感を煽るナンバー You Can't Get What You Want。一曲一曲がすばらしいが、それよりもなによりも、聴くものを捕らえて離さないのは構成の美だ。完璧主義者ジャクソンの性向が十二分にでたアルバムといえるだろう。コンセプトアルバムとしての完成度は、数少ないプログレの名盤に比肩しうる。とても靜かで地味なアルバムであるが、その完璧さへの追求においえてはナニモノにも負けないアルバムである。美しい。

◆このアルバム、16歳のときに手に入れたんですよ。いまでも月に1回以上は必ず聞きたくなります。多少時間に余裕がある夜、部屋を暗くしてオーディオの前に腰掛けて一人、その厚い音に酔いしれると、人生がとても豊かなものに感じられてきます。

◆もっと詳しくなら→ファンページ公式HP。試聴は→CDナウ

クロスオーバーなんて言葉知ってる?:SteveGadd

at 2001 01/17 16:54

◆この写真の人、Steve Gaddというんです。1945生まれのドラマー。アメリカで現存するもっとも尊敬されるスタジオドラマーの一人です。彼を起用したアーティストの幅も凄く広い。クラプトン、JB、ナタリーコール、チックコリア、ロバータフラック、ポールサイモン、ボブジェイムス、アルジャロウ、シナトラ等々。。。数え上げればキリがありません。

◆彼を初めて知ったのはポールサイモンのグラミーアルバムStill Crazy After All These Years、しかし、その頃(13歳)はまだドラムまで分からず、同アルバムでキーボード弾いていたRichard Teeのゴスペルっぽさに惹かれたものでした。そのTeeが参加していたフュージョン/クロスオーバーのユニットStuffの音で、Gaddのドラムの良さに気づき、そしてこのアルバムGaddaboutで彼に夢中になりました。残念ながら、この後、GaddはGadd GangというR&Bバンドを組み、そのバンドは(僕の苦手なD.マシューズがプロデュースしていたこともあってか)イマイチ魅力的じゃなかったので追いかけませんでした。つまり僕にとってGaddaboutが唯一のSteve Gaddリーダーアルバムなのです。

◆86年に発表されたこのアルバムはフュージョンドラマーのリーダー作としては、あまりにも洗練されていて、ドラムを聴かせることよりも曲を大事にしていることがよく分かるアルバムでした。一曲目のタイトル曲の小気味いいリフから始まり、ミュージシャン全員の息の合っているところがよく分かるMy Little Brother 、我が子に捧げたDuke(Gaddのスキャット入り!)、そしてTeeのフェンダーが美しいバラード曲Leavin' Tonightまで全6曲、どれも素晴らしくキマッている。これを聴いているとやはりNYに生きるミュージシャンって段違いに凄いんだなぁとしみじみ思います。

◆そうそう、Manhattan Jazz Quintetにも参加してたんだよねぇ、あのユニットもマシューズが中心だったのでアルバムはレンタルですませちゃった。Liveはカッコ良かったですけど。今はポールサイモンとの仕事が中心みたいだから、サイモンの曲はいいけど、あんまりドラムがどうのって感じじゃないなだよなぁ。やっぱり盟友Teeの死後、ちょっとパッとしなくて残念です。。。早く新ユニットでの活動をお待ちしてます♪  そういえばMichel PetruccianiとのJazzのライブアルバムはまだ聞いてねえや。。。

◆GaddのHPはこちら→

懐が深くなった?:Sade

at 2001 01/18 17:11

◆近頃Sadeが流行っているらしい。久方ぶりのニューアルバムなので注目されてるんだろうと嵩をくくって聴かずにいた。しかしどうもそれだけではないらしい。というのも、Sade全盛期をしらないはずの小娘たちまで騒いでいるので不安になって買ってみた。

◆聴く前にSadeの85年の2nd Promiseを聴くことに。Sweetest Tabooの収録されているやつだ。突然盛り上がるオープニングからいきなり静寂に、そしてHelen Folasade Sade Aduのクールな声がメロディを奏ではじめる。クールでジャズィで毅然としていておしゃれ。それがSadeのイメージだよな、と一人納得する。ライナーノーツには大伴良則さんとJazz関係の評論家が、Rock/POPSの面とJazz/ボーカルの面からSadeを語っていた。そーいえば、SadeはRockじゃないって怒っていたヤツいたよなぁ、まだそんな時代だったんだなぁと考えていると全曲終わっている。さすがレコードの時代、40分くらいしかはいってないや(笑)

◆さて新譜Lovers Rockです。シングルヒットした一曲目から、以前通りのSade節、クールでおしゃれな世界が広がる。。。しかしなんか違う! なんか温かいんだよね。癒し系っていうか。Sade Aduってもっと高みから見下ろしているような感じじゃなかったっけ? 手に届かないイイ女然としたキャラだったよなぁ。今でもイイ女に違いないけど、このアルバムから感じるAduって手に届きそう。何もいわなくても察してくれるタイプのイイ女っぽさだよなぁ、昔は自分が子供だったからわからなかっただけかなぁ、と逡巡してしまった。

◆しかし、そうではない。これは明らかに音楽的な成長なのである。人としての深みが出ているんじゃないかな、それに合わせて音が丸くなっている。ファッションや主張等という自発的なものではなく、聴いている側の聴きごこちとか、長く聴いてもらえるための穏やかさ、疲れなさ等を基準に音を作る体制に変わっていったのだろう。本当のエンターティンナーになったのかな。今までのファンのイメージを崩すことなく、人の心の中に染み入ることが出来る音楽、それが作れるようになったということだね。

◆かけっぱなしにして良し、じっくり聴きこんで良し、しかしおしゃれさもあり、疲れない。うーむ、いいアルバムだ。Aduもまたイイ女になったな(笑)。

◆オフィシャルはここ→

鬱屈した諦念とアドレッサンス:NewOrder

at 2001 01/21 20:12

◆誰にもその青春時に心を揺さぶられた音楽や小説がある。それらは妙にとげとげしかったり、痛々しかったりして、剥き出しの傷跡を見せているようなものが多い。それらに若者が共鳴してしまうのは、やはり心の中に言い知れぬ傷を持っているからなのだろう。

◆僕にとってのそれはNew Orderだった。簡略に彼等の歴史を振り返ると、前身は80年代初頭に現れたJoy Divisionというポストパンク/ニューウエイヴとして期待された英国バンドで、その全米初ツアー前日にカリスマ的ボーカリストのイアン・カーティスが自死してしまう。契約は残るは、存在意義は失うはという状態のメンバーたちは、くじ引きでボーカルを決め、メンバーの女友達に即席でキーボードを教え込み、とりあえずの新バンドNew Orderとしてレコーディングに入ることになった。追悼の意味で作ったダンスナンバーBlue Mondayが全英で大ヒットしてしまい、そのまま人気ダンスバンドとして10年以上曲を出しつづけることになる。

◆上記の通りNew Orderというバンドは始まる前に終わっているバンドであり、目的も意義もなく、存在自体が諦観に覆われている。歌はどうしようもなく下手だし、キーボードは指一本で弾ける程度のしろもの。リズムは打ちこみで、歌の内容も個人的悲壮感に占められている。たしか唯一の日本公演は東京60分、名古屋45分で終わってしまったらしい。ボーカルのバニーが人前で歌うことに我慢できなくなっていたと聞いた。聴くものに楽しみやメッセージを伝えることが音楽の意義であれば、彼等のそれは最初から音楽ではない。普通、ダメな音楽に使われる蔑称の「自慰行為」ですらない。本人たちが楽しんですらないからだ。

◆諦観に占められたダンスビートをヘッドホンで流しつづけていると、虚無感にさいなまれる。自分の/社会の殻から脱出しようにも、その元気すらない。死ぬ勇気もないのでとりあえず踊っておく、そうすれば疲れて眠れるだろう。そんな叫びにすらならない叫びが、10代の僕の中で共鳴したのだろう。

◆僕が彼等と出会ったのは「権力の美学」(画像最左)。アルバムタイトルも、アーティスト名すらない、アルバムジャケット、印象派風の薔薇のみがあまり美しくなく咲いている。言い知れない不安に苛まれて購入することが出来なかったものだ。

◆自ら購入した初アルバムは86年の「Brotherhood」(左から3枚目)。これもアルバム名もクレジットもない。しかし、サンドストームのような荒れた画像のジャケットは無名性や拒絶を詠っているようにも見えて、脱産業主義的に思えた。「音楽は商売ではない!」と幼い事をいっていた当時の自分には好感が持てたものだ。一曲目、スカスカの電気的ビートで始まるParadise、マイナーコードで延々と続くI Love Youのフレーズ。どんなに切々と訴えても届かないことが分かり切ってしまっていて、自分の無力感に絶望しながら一人ごちているような歌だ。このアルバムを買うきっかけとなった6曲目Bizarre Love Triangle。とても踊ることの出来るわけないマイナーメロディ。ビデオクリップ内で執拗に繰り返される青空の中のジャンプシーン、バーニーの鬱屈したボーカルのせいで、その透き通るような青空がなんと皮肉に映った事だろう。原爆の後の青空のようだ。このビデオほど、爽やかな空を否定できる映像はないかもしれない。そして「上手に出来ないからもう辞めた!」というような感じで唐突に終焉を迎えるこのアルバム、自分は何度聴いただろう。若者ゆえの諦観、自分勝手さ、己愛、それらがいっしょくたになった焦燥感がこのアルバムには詰まっているように思えた。

◆当時、彼等のアルバムには歌詞カードはついていなかった。曲名さえよーく探さないと見つけられないような状態だったのだ。だから全然歌の意味はわからないのだけど、でも、彼等の嫌悪感、けだるさ、諧謔的に非商業的な商業ヒットのパラドクスによって追い詰められる焦燥感は充分伝わってきた。

◆そしてMy BestチューンであるTrue Faith(左から4枚目)。

とてもへんな感じ
何かが僕を捕らえられているような。
動いているとこんな感情に苛まれる
解放された感覚
そんなもの存在しないからぼくは気にもしない
明日生きているかも分からない
だから何度も、
君に代償を支払わせることばかり考えてる
(五條訳)

自虐的なほどな青をバックにした黄金の枯葉。そんなジャケットに鬱屈した狂気を感じるのは僕だけだろうか。得体の知れないものに捕らえられる感覚、感覚とさえもいえないかもしれない、漠然とした恐れ、そのようなことを(たぶん)テーマとしているこのTrue Faithは彼等の最も美しい曲として僕の中に残っている。そしてそれはビデオクリップに出てくる、ただ延々と殴り合いを続ける道化たちの狂気をもエッセンスとして含んでいるのだろう。

◆長くなった。多くの若者がメタルやROCK等の破壊的・現状打破的なモノにシンパシーを感じていた年代にこのような鬱屈や諦観が僕の中を支配していたのは事実だろう。しかし、それらは表には決して出ることなく僕の性格を形作っていったのだと思う。そういう意味でも僕は屈折しているらしい。

◆画像は左から2nd「権力の美学」3rd「Low Life」 4th「Brotherhood」 マキシシングル「True Faith」 12インチを集めたベストアルバム「Substance」アーサーベイカーのリミックスが冴え渡るシングルヒット「Touched By The Hand Of God」

LOVE PSYCHEDELICOです

at 2001 01/24 17:33

◆DELICOですよー、売れてますねぇ。今朝、CXのワイドショー「トクダネ」でも特集してましたよ。まぁファン心理っていうか、デビューから目をつけていた人間って売れちゃうとなんか面白くない(笑)。まぁ自分の感性が時代をほんのちょっとだけ先取りしていたとでも思って、納めておきましょう。

◆で、アルバム聴いた感想だけど、みんな同じような視点で語り始めてるので(小倉アナまで!)聞き飽きたとは思うけど、日本語とROCKの問題ですか。60年代〜70年代にかけて、日本語はRockのメロディに乗るのかどうかという問題が、本気で語られていたわけですよ。そして、それら全てを無視して「はっぴいえんど」が日本語で強引に歌い始めて、サザンと元春がひとつの方向性を見せた。そしたら今度はRapなんて出てきちゃって、元春のアルバム「Visitors」から新たな議論がでて、スチャダラパーやMc A.T.なんかが方向性を模索したわけですね。そしてDELICOの登場。日本語なのにまるでLennonやByrdsのような歌。どうしてこんなにカッコ良く日本語が歌えるわけ?ってのが感想。カラオケでは超歌いにくいけどね(笑)。

◆ラスト曲「A DAY FOR YOU」なんかモロ「Give Peace A Chance」(Plastic Ono Band)のようだ。多くの曲がフラワームーブメント時代の作品の雰囲気で、「サイケデリコを愛してる」というバンドネームも、本当にピッタリです。 VoのKUMIさんもシスコに住んでいたらしいの、無意識段階でサイケのグルーヴを持っているんでしょうね。才能というものなんでしょうね。

◆しかし、日本語らしくない歌い方とフラワーっぽいセンス、そしてアコースティックでメロディアスな曲、こんなに売りが明確なバンドも珍しいですよね。すでに商業的には完成されちゃってる。この後どうするんだろ?どういう方向に進んでいくんだろって他人事ながら心配になっちゃいます。僕的にはスパイものとかそういうちょっと前時代的な雰囲気のコンセプト売りしていくのも楽しいんじゃないかなぁとは思うんですが、まぁ今後を見守っていきましょう♪

◆公式HP→

今月のオトシャベリへ、●アーティストリスト


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